『大学でどう学ぶか (ちくまプリマー新書)』
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(著) 濱中淳子
出版社 ‏ :‎ 筑摩書房(2025/2/7)
ASIN:B0DVSJP94T
大学進学率が6割を超え、大学も学生も多様化している現代において、本書はすべての大学生の指針になる「学び方」を伝えます。キーワードは「アウェーの世界に飛び込む」と「教員の活用」のたった2つです。 【目次】プロローグ/第1章 6人の物語──それぞれの4年間/第2章 6人の物語を整理する/第3章 アウェイの世界に飛び込む──成長の条件【その一】/第4章 教員を活用する──成長の条件【その二】/第5章 学(校)歴の効果をどう読むか/エピローグ/あとがき
#61.12_本
https://bsky.app/profile/tkstks.bsky.social/post/3lju2pyeves2r
濱中淳子『大学でどう学ぶか』を読みました。教育社会学者である著者らの大学生へのインタビュー調査の中から、ある大学の6人を取り上げ、そのストーリーをもとに「大学で何を学ぶか」ではなく「どう学ぶか」を論じていく。発達心理学者のキーガンの構造発達理論を用いて、〈アウェイの世界に飛び込む〉、〈教員を活用する〉という2つの成長の条件を導いている。「結局、学歴(学校歴)が大事なんじゃないの?」といった疑問にも答えたり、日本の大学教育の構造についても触れたりしている。「高卒だから」、「もう大学は卒業してしまったから」という人でも大人の学びを考えている人であれば役立つヒントは得られる本です。
中高生や大学で学び始めたばかりの学生に大学での学びについて何を伝えるべきか
よくあるのは大学では未知を学ぶ( =研究)というもの
しかし、実際研究について意識している学生は少ない
なので、
研究することでどのような成長が見込まれるかの説明が必要
加えて、研究以外の活動も視野に学びや成長にとって大事なポイントを提示する
活動別のアドバイスはほぼ無力
「〇〇がいいよ(たとえば、サークル、アルバイト、インターンシップ)」といったアドバイスはあまり意味を持たない
同様に、大学の授業への臨み方を一様に解くのもほぼ不可能
ロバート・キーガンの構造発達理論
発達心理学とは加齢に伴ってどのように成長するか、そのプロセスを特に精神面に注目して検討する心理学の分野(101)
https://gyazo.com/9980ad99c418133452248da17e9cf342
大学時代の学びを変える2つの条件
〈アウェイの世界に飛び込む〉
tks.icon筆者の専門は教育社会学
教育社会学の中の生徒文化研究:それぞれの高校には支配的な文化がある
支配的な文化の中で過ごす時間が必然的に思考停止をもたらす
アウェイの世界で一定の時間を過ごすことが大事になってくる
「知りたい」「経験したい」気持ちになっていくと発達段階2に突入している
ジョン・D・クランボルツの計画的偶発性理論:偶然が意図的に生じるように自ら行動する
ビジネスに成功した人の8割が偶然の出来事によってキャリアのターニングポイントを迎えた
必ずしも偶然に出会えるわけではないが、出会う確率は上がる
条件付き確率の考え方
アウェイ世界の重要性は大人の学びにおいても注目されている
越境学習:組織を超えて開催されている学びに参加しつつ、学習すること
日本社会自体が社会的孤立度が高い
越境学習には物理的な越境、心理的な越境のどちらに注目するものがある
tks.icon物理的に越境すると心理的に越境しやすいのはありそう
第4章 教員を活用する
第2段階から第3段階、第4段階にいくためには何が大事か
第2段階と第3段階を比較
第2段階の学生も第3段階の学生もどちらも頑張っている
教員と話した機会の多寡が違う
大学教員というアクターに注目
研究者としてプロフェッショナル=なぜ?を考え続けている
「なぜ?」の問いを投げかけることが自分の役割だと認識している
教員からの問いは、手段への問いではなく、目的の問いになりやすい
パスカレラとテレンジーの研究
成長developmentと変化changeを区別する
成長は目的志向の変容であり、人の行動に継続的な影響を与える
大学教員の問いかけがなくても成長することはあるが、進学したならせっかくだからプロの力を借りたら方がいい
tks.iconそれはそうだ
第3段階と第4段階の違い
大学教員と話した機会の多寡に加えて、時間の違い
応急処置とじっくり治療の違いのイメージ
ORT(On the Research Training)
社会工学者の矢野眞和さんが提唱したワード
どれほど深く、長く研究活動に関わったか
第3段階から第4段階へ進むための要件は「教員を活用する」
どの活動をするかではなく、どのようなスタンスで臨むか
教員に話しかけることから始める
学部の低学年のときからアクションする
大学教員は自分の専門以外の質問にも対応できる
学会で自らのテーマ以外の情報にも触れているから
教員は学生が「現場の言葉」で語った興味関心を「アカデミアの言葉」に翻訳する
第5章 学(校)歴の効果をどう読むか?
tks.icon学歴で評価されるのだから、大学での学びに意味はないという言説への回答の章
学歴はタテの学歴とヨコの学歴の2つを設定することができる
tks.iconタテの学歴はいわゆる〇〇大学
ヨコの学歴を学校歴と表現しておく
〇〇大学△△学部といった進学先の選抜制の程度を含む
上位大学には所得向上効果が見られるものの、偏差値59以下の学校歴では平均所得に差がない
上位大学の所得向上効果はシグナリング理論で説明できる
シグナリング理論は ①情報の非対称性と②生産能力と大学教育を受けるための費用との関係性で説明される
もし学歴フィルターが存在しているとすれば人事課は大学後の学びとは無関係の次元で選抜をおこなっている
大学での学びにも所得向上効果が認められる
ただし、現在の所得向上を規定するのは働いている現在の学び
大学での学び→働いている現在の学び→現在の所得
学び習慣仮説(学ぶ習慣がその後のキャリアを豊かにする)が大事
学び習慣仮説はどのタイプの大学でも確認できる
もし上位大学ほど学びが豊かになるなら、やっぱり学歴が大事では?という疑問
tks.icon実際そうかもだが、学歴だけではないという説明になっている
ノンエリート大学はアウェイの世界に飛び込むきっかけが少ない
ユーグレナのエピソード
東大ベンチャー
周りの学生や専門家に相談
東大という信用によって助言が得られやすかった
上位大学という学校歴に支えられて学ぶことは「効率がいい」とは言える
加えて、過去の自分を思い出すことがエンジンとなる
中堅大学やノンエリート大学の学生には見られなかった
エピローグ
キーガンの議論『なぜ人と組織は変われないのか』
キーガンは大人を念頭に置いている
キーガンの議論のポイント
①知性の発達は思春期で終わるという言説は誤りで、大人なっても知性は成長するし、大人はたゆまざる知識の深化が求められる
②大人の知性は3つの段階に区分される
環境順応型知性(発達段階3)
自己主導型知性(発達段階4)
自己変容型知性(発達段階5)
tks.icon大人は発達段階3にいる前提ではあるんだ
③知性の段階が進むほど成長は難しくなる。そこで成長を促す方法として開発されたのが「ITC(Immunity to Change)」で、「免疫マップ」を作る作業
tks.iconImmunityってなんだっけ?免疫か。
①改善目標は何か、②それを阻害する行動は何か、③阻害行動をとってしまう裏の目的は何か、④裏の目標の理由となる強力な固定観念は何か、の四つを炙り出し、固定観念を問い直すことで行動を変えていく
④これらの作業によって弱みをさらけ出し、周りのフィードバックを受け入れやすくし、個人、組織が変わっていく
人間の知性を高めるには「適度な葛藤」が必要
①問題に悩まされ続ける
②現在の認識アプローチに限界を感じる
③大切な場面でその限界を痛感する経験をする
④適度な支援を受けることで、葛藤に押しつぶされず、その重圧から逃れることもできない状況に身を置く
tks.iconこれが1番難しいし、大学の役割はこれだね。筆者もそう書いている。
本書は日本の大学の現状を前提に描いたもの
日本の大学は学びを強制できない
限られた財源や個別指導が難しい一対多数の教育環境のため